COLUMN 物流コラム
【令和5年10月1日改正】トラックの昇降設備の設置義務とは? 改正内容や設備選びのポイントを解説!
労働災害防止の観点からトラックの昇降設備の設置義務について、従来は最大積載量5t以上の場合が対象でしたが、法改正により2023年10月1日以降は最大積載量2t以上の場合も対象となりました。なお、昇降設備は「手すりのあるもの」などの要件もあるため、導入前に確認が必要です。
本記事ではトラックの昇降設備設置義務の改正内容と違反時の罰則、昇降設備を選ぶポイントを解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
【2t以上は義務】トラックの昇降設備の設置義務について解説
2023年10月1日改正の「労働安全衛生規則」(以下、安衛則)により、これまで最大積載量5t以上のトラックを対象としていた昇降設備の設置義務が、2t以上5t未満のトラックにも拡大されました。なお、2t未満であっても、高さが1.5メートルを超える場所で作業をするときは原則、昇降設備の設置が必要です(※)。(安衛則第526条)
法改正の背景
安衛則が改正された背景には、トラック事業時の労働災害増加が挙げられます。近年のトラック事業の労働災害は荷役作業中の事故が7割を占めるため、安全対策が強化されました。その中でも約9割が2t以上のトラックで発生していることから、設置義務範囲が拡大されています。
昇降設備の要件
昇降設備はどのようなものでもよいわけではなく、作業員が安全に昇降できなければなりません。具体的には以下のような要件が挙げられます。
- 手すりのあるものや、踏板に一定の奥行きがあるもの
- トラックに設置している昇降用ステップを使うときは、両手・両足の四点のうち三点で身体を支えられるように昇降グリップをつけること(三点支持)
昇降設備は床面と荷台の間だけでなく、床面から荷の上までの昇降時にも設置が必要です。なおトラック後部のテールゲートリフターを昇降設備としたいときは、止めた状態で踏み段として使います。作業員を乗せて昇降させてはいけません。
安全に使用できるのであれば、荷役作業場所にある踏み台等やトラックに積んでいるものなど、可搬式のものでも問題ありません。
※参考:厚生労働省.「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント」
トラックの昇降設備設置義務に違反すると罰則がある
労働安全衛生法第20条第1項違反をした事業者に対しては、6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が課される恐れがあります。
もし現在使用している設備が法律上の要件を満たしているのかどうか分からないときは、最寄りの労働基準監督署に問い合わせてみてください。要件に適合しない場合、昇降設備とみなされない恐れがあるため注意が必要です。
安全な昇降設備を選ぶための6つのポイント
ここからは厚生労働省の資料を元に、安全な昇降設備を選ぶための6つのポイントを解説します。これらの基準に則った上で、軽量・安価・持ち運びしやすいなど、現場で使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
※参考:厚生労働省「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント」
1. 地面から踏面の段差は50cm以内
昇降設備は地面から階段の足を乗せる踏面(ふみづら)まで、また段差ごとの差は50cm以内のものを選びましょう。段差が大き過ぎると安全性を欠いてしまいます。
2. 踏面幅は両足を置ける
踏面の幅は作業員の両足が乗せられる必要があります。片足ずつしか乗らないものは適していません。
3. 踏面の表面上に滑り止め加工がされている
バランスを崩してしまわないために、踏面の表面上には滑り止めの加工が必要です。現在使っているものに何の加工もされていないのであれば、ノンスリップテープなど、後付けできる製品もあります。
4. 踏面は板状またはスリット状
踏面は一般的な階段のような板状、または階段の隙間から向う側が見えるスリット状としています。昇降ステップなど棒状の場合は、三点支持できなければいけません。
5. 車両取付型は突出して1カ所以上設置されている
車両取付型の昇降設備は以下のように、車体側から突出して1カ所以上設置されている必要があります。
- リヤドアフレームのグリップとリヤドア下部の踏み段
- ドアフレームに装備したグリップとサイドステップ
- あおり内側回転式ステップの装備
6. 荷台から見て足裏半分以上が視認できる踏面を設置
地面から荷台までの間の昇降設備には、荷台から見て足裏の半分以上が目視できる踏面を一段以上設置する必要があります。トラックに設置している踏み段が荷台から確認できないときは、目視した上で足の半分以上を乗せられるものを設置しましょう。
事故防止のためにもトラックから安全に昇降できる設備の導入が必要
安衛則の改正より、トラックの昇降設備の設置義務について、最大積載量2t以上の場合にも設置が義務化されました。違反時には6カ月以下の懲役や50万円以下の罰金が科される恐れがあるため、速やかに適切な設備を導入しましょう。
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